
学校事故
学校事故
児童・生徒が日常生活の大半を過ごす学校生活において、思いがけない様々な事故が起こりえます。
学校の管理下で発生した事故により、大切なお子さんがケガをした場合に、誰に対して何を根拠に責任追及できるのでしょうか。
学校の管理下で発生する事故として、例えば・・・
●授業中の事故
体育の授業中(サッカー、柔道、水泳等)にケガをした
理科の実験中に試験管が爆発した
調理実習中に火傷を負った
●部活・クラブ活動中の事故
部活中、熱中症で倒れた
屋外で部活中、落雷によりケガした
●その他
給食による食中毒、いじめ、体罰等
が想定できます。
加害者(児童・生徒)に対する責任追及
・同級生や先輩からいじめられ、ケガをした、いじめが原因で自殺した・・
→加害者に対して不法行為責任(民法709条)を請求することが可能です。
もっとも、加害者の責任能力が否定される場合(だいたい、12歳以下ですと責任能力が否定されます)に、加害児童に対して不法行為責任を追及することはできません。
加害者(児童・生徒)の親に対する責任追及
加害児童が責任無能力とされた場合、その児童の親権者は、監督義務者として法定監督責任(民法714条1項)を負います。
加害児童・生徒に責任能力が認められる場合、親権者は法定監督責任を負わないものの、事故発生自体に対する注意義務違反があり、損害発生との間に相当因果関係が認められる場合には、親権者自身の不法行為責任(民法709条)を負います(仙台地裁平成20年7月31日)
教職員に対する責任追及
教職員が児童・生徒に故意に体罰を加えた場合、学校事故発生についての教職員の監督指導不足・安全保持義務懈怠がある場合、教職員の責任を追及できるのでしょうか
→国家賠償法上、教職員に責任がある場合に国・地方公共団体が代わりに責任を負う制度であるため、国公立学校の教職員に対して直接、責任を追及し、損害賠償請求することはできません(最高裁昭和52年10月25日)。
他方、私立学校の教職員に対しては、直接、責任を追及し、損害賠償請求をすることができます。
学校に対する責任追及
学校の管理下で発生した学校事故について、学校側に責任追及することは可能です。国公立学校については、国・地方公共団体が責任主体となり、私立学校は学校法人が責任主体となります。
責任追及の根拠は、
・教職員に不法行為責任あるいは親権者代理監督者責任が認められることを前提に、使用者責任(民法715条)学校が国公立の場合は国家賠償責任(国賠1条1項)
・債務不履行責任(民法415条):学校の安全配慮義務違反
・代理監督者責任(民法714条2項)
加害児童の責任能力が否定される場合
・工作物責任
固定遊具や校舎の施設に瑕疵があり、これにより怪我を負った場合には、土地工作物責任(民法717条)、国公立学校の場合は営造物設置管理責任(国賠2条1項)を負うことがあります。
★なお、学校側に責任が認められない場合であっても、JAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)から一定程度の災害共済給付の支給を受けることができますので、学校の管理下で事故に遭われた場合には、請求されることをお勧めします。
学校事故に関する判例
・最高裁平成21年4月28日判決における事案の概要は、公立小学校の教員が悪ふざけをした2年生の男子を追いかけて捕まえ、胸元をつかんで壁に押し当て大声で叱った行為が「体罰」に該当し、これにより、児童がPTSDになったとして、小学校を設置管理する自治体に対し国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求を求めたというものです。
この点、一審及び源信は学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するとして損害賠償請求を認めたが、最高裁は、被害児童の悪ふざけを考慮し、教員の行為は、その目的、太陽、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当しないとして、教員の行為の違法性を否定し、損害賠償請求を認めませんでした。
・仙台地裁平成25年9月17日判決は、私立幼稚園の送迎バスに乗車していた園児が、東日本大震災避難中の津波で被災し死亡したという事案について、幼稚園側の情報収集義務の懈怠と死亡との因果関係を認定して、幼稚園の債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任として総額約1億7700万円の支払いを命じました(なお、控訴審である仙台高裁で、平成26年12月3日、総額6000万円での和解が成立しました)。
・最高裁平成18年3月13日判決及びこれを受けた差戻後控訴審判決は、生徒が、部活中、落雷によりケガをしたという事案で、「社会通念」や「平均的なスポーツ指導者としての一般的知見」ではなく「科学的知見」に照らして、落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったし、回避可能であったとして、教職員の責任を認めました。