
追突事故
◆追突事故特有の問題

追突事故は全ての交通事故の約半数を占めるといわれています。停車中の追突事故の場合,原則,被害者の過失は0です。また,追突事故の多くは,それほど重大な被害は生じることはないため,事故による損害賠償について,大きな争いが生じることはありません。
しかし,追突事故のケースでは,被害者の過失が0のため被害者の加入する保険会社の保険金支払の問題は生じないため,被害者本人が直接相手方保険会社と示談交渉等をしなければなりません。
また,追突事故の場合,相手方保険会社から軽微な事故であることを理由として早期の治療費や休業補償の打ち切り打診のなされる場合があります。このように,追突事故については,追突事故特有の問題が生じることがあります。
◆追突事故における慰謝料
追突事故における慰謝料の算定基準自体は他の態様の事故と同じです。もっとも,追突事故の場合には,それほど重大な被害が生じることはなく,また,仕事で忙しいなどの事情から病院に通院する日数が極端に少なくなってしまうことがあります。そのような場合には,実通院日数を基礎に算定する入院・通院慰謝料が極端に少なくなってしまいます。
たとえば,自賠責保険基準による傷害慰謝料の算定は4300円×通院期間とされているところ,この「通院期間」は総通院日数と実通院日数×2の少ない方を採用することとされています。したがって,たとえば1ヶ月に15日通院していれば4300円×30日=12万9000円の慰謝料が認められますが,5日しか通院していない場合には,4300円×10日=4万3000円の慰謝料しか認められません。同じことは,裁判所基準(弁護士基準)の場合でも妥当します。
◆追突事故と症状固定
交通事故における傷害による損害の賠償は,原則として,症状固定日までに生じた損害を対象とします。また,休業補償は休業の必要性の認められる場合に限り補償されるものです。そして,追突事故の場合には,他の態様の事故と比較して軽微であるとして,相手方保険会社から,比較的早い段階で,「もはや治療の必要性はないから症状固定である」として治療費の支払を打ち切られたり,「休業の必要性はない」と休業補償の支払を打ち切られたりすることがあります。
症状固定は第1次的には医師の判断する事項であり,相手方保険会社が決定するものではありません。また,追突事故でも,加害車両の速度,衝突箇所,被害者側の状況など様々な事情により,その衝撃,負傷の程度は異なります。そこで,被害者としては,治療費や休業補償の打ち切りを打診された場合には,治療継続の必要性や休業の必要性について,それを裏付ける根拠資料を準備して,相手方保険会社と交渉する必要があります。
◆過失0の場合の交渉
追突事故の多くは被害者に過失はなく,被害者本人の保険会社は保険金を支払う必要がないため,賠償金の問題について被害者の代理人として交渉することはできません。そのため,被害者本人あるいは弁護士等を代理人として交渉するほかありません。
◆後遺障害
追突事故の場合でも後遺障害の残存するケースはあります。この場合には,後遺障害等級認定の申請を行い,等級認定を受ける必要があります。
このとき,病院の通院日数が少ない場合には,後遺障害の等級認定において不利な事情となり得ます。そのため追突事故の場合でも,症状が継続する場合には,後の後遺障害の等級認定に備えて,症状の程度に応じて,しっかりと病院に通院しておくべきでしょう。