主婦(主夫)でも貰える?交通事故の休業損害を弁護士が徹底解説!
交通事故で貰えるお金の種類
交通事故に遭ってしまった際、相手側からはその損害をお金で補償してもらうことになります。
大きく分けると「事故発生から症状固定までの期間」に貰えるお金と「症状固定後」に貰えるお金の2種類です。
事故発生 | 症状固定(後遺障害認定または死亡) | ||
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財産的損害 | 積極損害 |
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消極損害 |
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精神的損害 |
それぞれの費用をどのように計算するかは各ページで詳しく解説しておりますので、そちらをご覧ください。
今回は事故発生から症状固定までの間に、交通事故による怪我等で得ることが出来たはずの収入を得られなかったことによる損害(=休業損害)について解説します。
休業損害と休業補償との違い
休業損害に似た言葉として休業補償がありますが、休業損害は自賠責保険から支払われるのに対し、休業補償は労災保険から支払われます。
休業補償は労災保険から支払われるので、労災保険に加入している事業者に雇用されている人のみが対象です。従って専業主婦(主夫)や自営業の方は対象にならないことに注意が必要です。
専業主婦(主夫)や自営業は「休業損害」だけが適用可能です
家事従事者とは
家事従事者とは、家族のために家事に従事している人(専業主婦(主夫)、パート)を指します。
結婚しているかどうかという判断基準ではないため、シングルマザーやシングルファザーであっても子どものために家事を行っていると考えられます。
一方で、一人暮らしで自分のために家事を行っている場合には家事従事者とされません。
専業主婦(主夫)、パートの休業損害の計算方法
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①自賠責基準
国が加入を義務付けている自賠責保険の基準です。
休業1日あたりの損害は6,100円(2020年3月31日以前の事故は 5,700円)です。
しかし、明確にそれを超過した損害であると証明される場合には、1日につき19,000円まで認められます。自賠責保険には120万円の支払い限度額(後遺障害がある場合や死亡した場合には異なります)があり、その120万円には通院交通費や治療費など全てを含まなくてはなりません。
休業損害までを自賠責保険の120万円以内で補うのは難しい可能性が高いです。
もし超過してしまった場合は、加害者によって補償してもらうことになります。 -
②任意保険基準
任意保険会社が独自に設けている基準です。
それぞれの任意保険会社によって異なりますが、基本的には自賠責保険と裁判基準の中間ぐらいの金額になることが多いです。
自賠責保険とは違って120万円の上限はありません。 -
③裁判基準
最も高額になりやすい基準です。
「賃金センサス(政府が毎年実施する収入調査の資料)」の女性労働者の全年齢平均賃金から1日当たりの基礎収入額を求めることが多いですが、高齢者の場合等では、年齢に応じた年齢別の賃金センサスを用いることもあります。
パートの場合は、現実の収入額かこの賃金センサスによる日額のいずれか高い方を基礎として算定することが多いです。
専業主婦(30代、女性)が30日間休業した場合
自賠責基準
6,100円(自賠責基準)×30日(休業日数)=183,000円
裁判基準
(3,943,500円*1÷365日)×30日(休業日数)=324,123円*2
*1 2022年の女性労働者の全年齢平均賃金
*2 小数点以下切り捨て基本的には仕事を休んだ日を休業日数として数えますが、家事従事者の場合には出勤がないため入院・通院に要した日数や、事故から症状固定時までの期間の内の労働能力を喪失した期間(日数)を休業日数とします。
また、日数以外にも、治療の過程で徐々にケガから回復して労働能力を回復する場合、期間ごとの労働能力喪失率を考えて休業損害が認定されることもあります。
したがって、裁判基準で考える場合には、上記の観点から、休業日数をどのようにとらえるか、またその間の労働能力喪失率はどの程度であったのかについて慎重に検討することが大切です。
家事代行サービス等を使用した場合
家事従事者が怪我等により家事の遂行が難しく、家事代行サービスやベビーシッター等を利用した際の料金も休業損害として認められる場合があります。
しかし、家事代行サービス等を使用した場合の費用については、当然に全額が認められるのではなく、家事代行サービスを利用しなければならない必要性と、費用の相当性が認められる範囲に限られるため、注意が必要です。
休業損害を打ち切られてしまった場合
治療中のため通院を続けたいと思っていても、加害者の保険会社から一方的に休業損害の打ち切りを言い渡される場合があります。
結論から申し上げると、そのような打診があった場合には安易に同意しないことが大切です。
休業損害は、医師による症状固定(これ以上は症状が改善しないと判断された状態)までなので、保険会社には決定権がありません。
したがって、保険会社から休業損害の打ち切りを伝えられても、症状が続いていると感じているのであればきちんと医師にそれを伝えた上で通院を続けることが大切です。
並行して保険会社には休業損害打ち切りを撤回してもらう必要がありますが、個人で対応するのが難しいと感じた場合には弁護士に相談するのがよいでしょう。
交渉等をすべて任せられるだけではなく、その後後遺障害と認定された場合にも適切な認定を受けられる手助けとなります。
当事務所の事例
専業主夫が休業損害を取得した事例
Aさんは自動車を運転中、後方にいたBさんの車に追突されました。
むち打ちなどの怪我で通院し、家事が出来なかったために休業損害の請求を行いました。
加害者であるBさんの保険会社は、男性であるAさんが家事代行者であることについて懐疑的であったため、Aさんが日頃から家事を行っていることを証明しました。
結果として相当額の休業損害が認められ、100万円以上の賠償金を獲得する内容で示談が成立しました。
約60万円増額し示談した事例
専業主婦であるCさんは赤信号で停車中に後方から来たDさんの車に追突され、頚部挫傷の負傷で約8ヶ月の通院治療を行いました。
担当弁護士が相手方保険会社に対し慰謝料増額交渉を行い、通院慰謝料が約30万円増額しました。
また、当初保険会社が提示していた約20万円の休業損害を約45万円まで増額させました。
結果として提示段階では約100万円であったところを約160万円まで増額させることに成功しました。
Cさんは弁護士費用等特約に入っていたため、弁護士報酬等はすべて加入保険会社から支払われました。
主婦(主夫)の休業損害は示談の前にご相談ください
主婦(主夫)の働きは、会社員と違い明確な数値で表されるものではありません。
逆に言えば、一日当たりの損害額も休業日数も交渉の余地があり結果には幅があるということです。
中には、そもそも家事労働で休業損害が請求できないと考えて示談をしてしまったり、明らかに家事への影響が長期間あるにも関わらず相手方保険会社が休業損害を少ししか認定していないケースも散見されます。
特に、後遺障害が認定されるようなケースでは、後遺障害により労働能力が喪失されるため、事故から症状固定までの全期間にわたって家事労働に影響があったと考えられるケースもあり、そのようなケースでは比較的休業損害が高くなりやすい傾向にもあります。
したがって、過少示談とならないよう、主婦(主夫)の方で休業損害に疑問を持たれた方は、一度弁護士へのご相談をすることを強くお勧めいたします。
弁護士に依頼することで示談金の増額が期待できます
弁護士に交渉を任せることで精神的・体力的な負担軽減にも繋がります。
保険会社から提示された条件を鵜吞みにせず、まずは弁護士にご相談ください。