示談交渉が難しい場合
交通事故の被害者は、治療終了後あるいは後遺障害等級認定後の損害確定後、加害者の保険会社と賠償金についての示談交渉を行う必要があります。
◆被害者本人による示談交渉の困難性
示談交渉は、話し合いにより賠償の問題を解決するものです。被害者としては適正な賠償額での解決を求めるのに対し、保険会社は可能な限り低額の示談金での解決を求めることになり、両者の話し合いは難航を極めることがあります。
また、示談金の金額の問題だけでなく、被害者自身が保険会社と直接示談交渉するため自分の自由な時間を犠牲にしたり、交渉のプロである保険会社の担当者とのやりとりに精神的負担を感じたりなど、交渉すること自体が大きな負担となり、これを回避したい思惑に駆られることがあります。
◆示談交渉が難しい場合の対処方法
このように被害者本人による相手方保険会社との直接の示談交渉が難しい場合の対処方法の一つとして、示談交渉を弁護士に依頼することが可能です。
◆示談交渉を弁護士に依頼するメリットとデメリット
示談交渉が難しい場合において、弁護士に示談交渉を依頼することのメリットは、
- ①保険会社から適正な賠償金の支払を受けることができること
- ②被害者本人による直接交渉による時間の犠牲や精神的負担を回避することができること
です。他方、弁護士に依頼することのデメリットは弁護士費用を負担することにより、最終的に被害者の受け取ることができる金銭の額は、弁護士費用の分だけ目減りすることです。
なお、弁護士は依頼者である被害者の正当な権利を擁護することを目的として、交渉だけでなく必要であれば訴訟活動を行う使命を担っており、被害者の唯一の味方になる存在です。
相手方の保険会社の担当者は被害者の味方ではなく、仲裁制度における仲裁人や調停における調停員は飽くまでも中立の立場の人であり被害者の完全な味方ではありません。
また、困っている被害者に手数料目的から近づく示談屋のような者についても同様です。
したがって、交通事故について被害者自身では対応できないことがある際には、できれば弁護士に相談することをお勧めします。
◆弁護士費用特約の使用の可否を確認しましょう
示談交渉について弁護士に対する依頼を検討する際には、まず被害者自身の加入する保険会社に弁護士費用特約の付帯の有無と使用の可否を確認しておきましょう。
もし、弁護士費用特約を使用することができる場合には、通常は相談料については10万円、その他の費用については300万円という上限までの弁護士費用は保険により賄うことができるため、被害者としては、弁護士費用の負担を軽減あるいは免れることができます。
なお、大多数の交通事故の場合、弁護士費用が300万円を超えることはないので、被害者としては、実質費用負担なく弁護士に依頼することができることになります。
弁護士費用特約が使用できない場合には、被害者の受け取る実際の賠償金は弁護士費用を控除したものとなりますから、依頼する前に必ず弁護士から費用及び依頼した場合の経済的メリットの見込等について説明を受けるようにしましょう。
◆弁護士に依頼するタイミング
弁護士に依頼するタイミングとしては、大きく、
①治療終了前
②治療終了後かつ後遺障害等級認定前
③治療終了後かつ後遺障害等級認定後
の3つあります。弁護士費用特約の使用できる場合には、基本的には、費用負担を考える必要がないため、基本的には、どのタイミングでも違いはあまりありません。
他方、弁護士費用特約の使用できない場合には、費用対効果を考えると、治療終了後あるいは後遺障害等級認定後(②または③)、かつ、保険会社からの示談提示のなされた段階での依頼を検討するのがよいでしょう。もっとも、後遺障害等級認定の申請手続を含めて弁護士に依頼したい場合には、保険会社からの提示のない段階での依頼を検討することになります。
◆弁護士に依頼した場合の解決までの期間
弁護士に依頼した場合の解決までの期間は、個別の事案によっては、かなり長期化することもありますが、通常は、交渉での解決であれば治療終了後あるいは後遺障害等級認定後から2か月から4か月程度、裁判手続による解決であれば治療終了後あるいは後遺障害認定後から6か月から1年程度と言われています。