示談金
交通事故の損害賠償において、慰謝料と示談金とは別の意味を持つ言葉です。交通事故の被害者の中には「慰謝料」という言葉を「示談金」と同じ意味のように使用している方もいますので、ここでは、両者の違いについて説明します。
◆示談とは
そもそも示談とは、交通事故により発生した損害の賠償について、当事者間の合意により解決することです。交通事故による損害賠償については、約9割は示談により終了しており、残りの1割は訴訟により解決しているといわれています。つまり、ほとんどの交通事故の場合、その損害賠償の問題は当事者間の話し合いにより解決しているということです。
そして、示談金というのは、この当事者間の話し合いにより決まった交通事故による損害の賠償のために支払うべき金銭のことであり、これは慰謝料を含む全ての損害についての解決金なのです。その意味では、示談金という言葉は慰謝料というより和解金あるいは解決金という言葉に似ています。
示談金と慰謝料が同じ意味のように使用されている理由として考えられるのは、治療費や休業補償などの賠償金については基本的に争いが生じることは少なく、かつ、保険会社から示談交渉に先行して支払われていることが多いため、最後の段階での賠償金の支払は専ら慰謝料のみというケースが多いためと考えられます。つまり、最終的に示談金として支払われる金銭の大部分は、慰謝料であるというケースが多いのです。
◆示談金の相場
示談金には慰謝料のような相場というものはありません。
示談金は交通事故により発生した治療費、入院雑費、通院交通費、休業補償、慰謝料、逸失利益などの全ての損害を含めた解決金であるため、あらゆる交通事故に関して、その総額を一律の基準により相場を形成することは困難だからです。
◆示談金を受け取ることの意味
示談金というのは当事者の合意による解決金であり、被害者としては、相手方保険会社の提示する示談金について同意しない限り、その金額の支払により解決ということにはなりません。
しかし、それは、逆に言えば、被害者が同意さえすれば、どのような金額であっても交通事故の賠償問題は解決することになります。
そして、通常、示談においては、保険会社の示談金の支払の約束と同時に、被害者は、以後、示談金の額を超える金銭の支払は要求しない旨を約束することになるため、保険会社から示談に基づく示談金の支払を受ければ、示談金の内容に納得できないことを理由に事後的に追加して賠償金の請求を行うことはできなくなるのです。
◆示談金の交渉の必要性
一般的に保険会社は少しでも低額の示談金の支払により解決を図るべく、被害者に対して色々な働きかけをし、被害者の同意を引き出そうとします。もちろん、そうした保険会社の働きかけの中には、妥当な賠償金の支払のための正当な言い分もありますが、そうではなく、とにかく被害者の同意を得るために半ば強引に提示に応じるよう働きかけるようなことも少なくありません。
そのため、交通事故の被害者としては、保険会社の提示する示談金について、その妥当性を慎重に検討し、示談に応じるか否かを判断する必要があります。その際には、たとえば慰謝料相場を参考にしたり、あるいは、最寄りの弁護士に提示の妥当性について相談し、場合によっては、示談交渉を弁護士に依頼することもご検討ください。もちろん、弁護士に交渉を依頼する場合には、最終的な示談金の受け取る金額は弁護士費用を差し引いたものですから、その点は費用対効果を考慮する必要があるでしょう。