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脳の後遺障害認定ポイント(高次脳機能障害)

目次

高次脳機能障害とは

足

脳の高次機能である認知、行為(の計画と正しい順序での遂行)、記憶、思考、判断、言語、注意(の意図的な持続)などが、脳梗塞の内疾患や、交通事故などによる脳外傷により損傷を受け、障害された状態をいいます(大阪高判平成21年3月26日)。

脳の障害については、脳が器質的に損傷したことによる器質性の障害と、脳の器質的損傷が認められない場合の非器質性の障害に分かれますが、脳外傷による高次脳機能障害は、器質性の障害であり、脳が器質的な損傷を受けたことによる障害を意味します。

高次脳機能障害の特徴

高次脳機能障害の特徴としては、記憶力障害や遂行機能障害等の認知障害、周囲の状況にあった適切な行動ができない行動障害、自己中心的な行動や易怒性が発現する等の人格変化が多く出ることに特徴があると言われています。

事故後の認知能力に問題はないものの、怒りっぽくなった等周囲にいる人にしか変化が気付かず、その変化も軽微な場合があるため見過ごされやすい障害であるとも言われています。

後遺障害等級

以下の表のように「介護」の必要性の有無で1級又は2級、就労制限の程度により3級から9級まで認定される可能性があります。

1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

高次脳機能障害の認定にあたっての重要な点

脳外傷による高次脳機能障害は、脳外傷を受け、脳に器質的な障害(病変が物質的又は物理的に特定可能であること)が生じることによりおきます。

器質的な障害を確認する観点から、①画像上の所見と②意識障害の程度が重要です。

① 画像上の所見

CTやMRI画像により器質的病変を裏付ける所見が認められるかは非常に重要です。

医師の確定診断が脳挫傷やびまん性軸索損傷といった傷病名の場合、器質的病変が確認できる状態ということであるため、高次脳機能障害が残らないか注意して見守る必要があるでしょう。

また、脳の器質的損傷の特徴として、脳萎縮があげられることから、受傷後の脳萎縮の有無が確認できるかも重要です。脳萎縮については、約3カ月で固定することから、受傷から3カ月程経過後の脳萎縮の有無及び程度は、器質的損傷の程度を図る上で重要であるといえます。

なお、CT、MRI以外の拡散テンソル画像(DTI)、fMRI、MRスペクトロスコピー、PETについては、これのみで因果関係を肯定することはできないので注意が必要です。

② 意識障害

意識障害の有無及び程度は、脳機能に障害が生じているかどうかの重要な判断要素となります。

受傷直後において、反昏睡~昏睡状態が6時間以上継続すると、高次脳機能障害が生じる可能性が高いとされています。

後遺障害申請における必要書類

高次脳機能障害が疑われて申請する場合には、次の❶から❺の資料を揃えることになります。

❶CT、MRI画像

上述した①画像上の所見を確認するための資料です。

❷頭部外傷後の意識障害についての所見

上述した②意識障害の有無及び程度を確認するための資料です。意識障害の程度については非常に重要であるため、カルテや看護記録等からきちんと確認することが必要です。

❸後遺障害診断書

症状固定の段階で、医師に診断書を書いてもらうことになります。❺の資料も作成する必要があることから、症状固定時期(作成時期)については、担当医と十分に打合せをする必要があります。

❹日常生活状況報告書

事故前後の日常生活及び社会生活における行動変化を記載するものです。家族や同居人等、被害者を事故前からよく知る人に記載をしてもらうことになります。高次脳機能障害は人格変化等目に見えにくい症状があることから、事故前後の変化を詳細に記載することが重要です。

記載の内容としては、労災の認定基準である㋐意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力)、㋑問題解決能力(理解力、判断能力)、㋒遂行能力(作業負荷に対する持続力・持久能力)、㋓社会行動能力(社会適合性、協調性)の4つの項目を意識して記載することが考えられます。

日常生活状況報告書の記載内容が❺神経系統の障害に関する医学的意見と符合するかという観点も重要であるため、医師ともすり合わせをした上で詳細に記入することが必要でしょう。

❺神経系統の障害に関する医学的意見

これは、画像に関する所見、神経心理学的検査に関する所見、運動機能や身の回り動作能力、行動障害等について医師の立場からの意見を記載するものです。

神経心理学的検査について

受傷後の記憶力障害、遂行機能障害等については、各種の検査を通じて確認することになります。

検査項目は多岐にわたるため、全ての検査が終わるまでに2か月程度かかります。そのため、医師と打合せをした上で、症状固定を見据えて適切な時期に検査を行う必要があります。

なお、神経心理学的検査は行動障害や人格変化を検査するものではないことから、これらの障害については前述した日常生活状況報告書にきちんと記載することが重要であると考えらえます。

運動機能や身の回り動作能力、行動障害等

運動機能については、担当医も十分に把握していることから問題ないと思われますが、身の回り動作能力や行動障害等については、日常付き添っているわけではない医師には十分把握していない可能性もあります。したがって、❹日常生活状況報告書の内容も十分に伝えた上できちんと情報の共有を図って記載してもらう必要があります。

裁判例について

ケース1
事故直後の意識障害が軽微であった事例

自賠責12級13号→裁判5級2号

本判決は、受傷直後の意識障害の程度は軽度でありその持続時間も短いものでしたが、受傷当初から高次脳機能障害の特徴的な症状が現れていたことや、びまん性脳損傷ないしびまん性軸索損傷を負ったことを示唆する画像所見等が存在こと、事故後の認知能力が標準を下回る水準にあることを示す神経心理学的検査の結果が存在していたとして高次脳機能障害が残存したと認定しました。

そして、障害の程度については、記憶障害から一人での帰宅や公共交通機関の利用ができないことや、易怒性が認められ、事故後の仕事も単純作業に限られていたこと等から、軽易な労務に制限される程度の障害として、後遺障害等級5級2号と判断されました。

本判決は、びまん性軸索損傷を負ったことを示唆する画像所見としてPETやSPECTの機能画像を根拠にしていることから、機能画像を脳の器質的損傷を認定する際の一資料としたものと考えられます。

(東京地判平成24年12月18日)

ケース2
日常生活動作が自立している場合の後遺障害の程度が問題となった事例

自賠責5級2号→裁判所3級3号

本判決は、原告の意欲や集中力の低下が著しく、「タバコを吸う」、「コーヒーを飲む」、「(用意された物を)食べる」、「排泄する」、「寝る」といったこと以外は、自発的に行うことはなかった点や、記憶障害も激しい点、応用作業が困難で頻繁に指示を与える必要がある点、洗車作業の就労作業も暴力をふるう等の行為もあり著しく困難を伴うものであった点、労災保険においては「常に介護を要するもの」と認定されていたことなどを考慮し、労働能力を100%喪失したと判断しました。

就労制限の程度を考慮するにあたっては、認知障害だけでなく、行動障害・人格変化をふまえた 社会的行動障害を重視すべきとされていることからすれば、単に日常生活動作が可能か否かではなく、実社会生活における就労にどの程度支障があるのかを具体的に立証する必要があるものと考えられます。

(東京地判平成20年1月24日)

ケース3
後遺障害等級3級以下の場合に将来介護費用が認められた事例

後遺障害 併合2級(高次脳機能障害5級、右足関節機能障害8級等)

本判決は、事故後、通院及び服薬、身辺の清潔保持、金銭の管理、危険に対する対応等の行動を1人で適切に行うことができない点や、父親以外の者との人間関係の構築ができず引きこもり状態にある点、日常生活を円滑に行えるようにするためには声掛けが必要であること等から、随時介護の必要性があると判断されました。

そして、介護の必要性の程度が高度ではないことから、日額3,000円の限度で認定しました。

(東京地判平成21年7月23日)