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顔・頭部の後遺障害認定ポイント

目交通事故によりお顔に怪我をされた場合、傷が残ってしまう外貌を損なってしまう問題は、心に与える影響が大きく、日常生活にも支障をきたします。
しかし、直ちに労働能力が下がらないことも少なくないため、後遺障害等級認定がなされても、保険会社が逸失利益の支払いを拒否することがあります。そのため、相手方との交渉や裁判での主張が重要となります。

目次

頭部・顔面・頚部の後遺障害等級

外貌に関する障害
7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
9級13号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
12級13号 外貌に醜状を残すもの、その他日常露出の可能性のある部分

 

頭部の損傷の裁判例

頭部外傷による高次脳機能障害について、自賠責保険での認定よりも裁判所での認定が高い等級で認定された事例についてご紹介いたします。

ケース1
自賠責保険の認定:3級→裁判所の判断:2級

自動二輪車を運転していた原告が、交差点で大型貨物自動車に衝突された事故。

この事故により、原告は右側頭部急性硬膜下血腫、脳挫傷、左側頭骨骨折等を受傷した。

頭部外傷後の後遺障害として、自賠責では後遺障害3級と認定されていたところ、裁判所において、原告の日常生活の範囲はほぼ自宅内に限定され、外出する際は看視が必要であることから後遺障害等級2級と認めるのが相当であると判断された事例。

(大阪地判平成15年1月27日)

ケース1のように、頭部損傷の影響で日常生活に支障が生じ、介護を要する程度のものであると認められた場合は、自賠責後遺障害等級は1級ないし2級となります。

もっとも、寝たきりでない場合等のように、自分で一定の行為ができる場合には「随時」介護が必要か否かの判断が難しいケースが多く、後遺障害2級と3級の境界は明確とはいえません。

そのため、早期の段階から神経学的所見の検査結果や医師の意見書、家族や職業介護人の介護記録等客観的な資料を収集することが大切といえます。

ケース2
自賠責保険の認定:非該当→裁判所の判断:7級

自動二輪車を運転していた原告が、交差点を直進していたところ、対向車線から右折してきた普通乗用自動車と衝突した事故。

事故後、病院へ搬送された際に意識があったことや頭部のCTやMRI上も脳損傷の画像所見が認められないことから、自賠責では後遺障害等級は非該当と診断されていた。

しかし、入院時から記憶障害があることや、事故後に精神症状が現れていること等から、脳損傷の程度は低いものではあるが高次脳機能障害を否定することはできないとして、後遺障害等級として7級と認めるのが相当であると判断された事例。

(名古屋地判平成24年2月24日)

ケース2では、事故直後は意識があり、脳損傷等の画像所見も認められなかったにもかかわらず、頭部に衝撃を受けていたことや、入院時に記憶障害があり、事故後に精神症状も現れていること(この事例では事故から数年後に泣きわめいたり大声を出す等の様々な精神障害が現れていると認定されています)等の事情を総合的にみて、高次脳機能障害として後遺障害等級7級相当と認めました。

脳外傷による高次脳機能障害の認定にあたっては、意識障害及び画像所見が特に重要されますが、この事例のように、事故後の病状、精神症状等について緻密に主張することによって高次脳機能障害が認定される可能性もあります。

交通事故等で頭部に衝撃を受けた場合、重症化することが多く、意識障害や感覚障害、言語障害等、損傷を受けた部分によって様々な症状が現れます。

後遺障害等級によって、加害者に対して請求できる慰謝料や逸失利益の金額は大きく異なります。

また精神障害を発症している場合には、頭部への衝撃と精神障害との因果関係を立証していく必要がありますが、精神障害については見過ごされてしまう場合もあるため、立証が難しいことが多いです。

適正な後遺障害等級を得るためにも早期の段階で専門家に相談したほうがよいでしょう。

目の後遺障害等級

目の障害には、視力障害、調節機能障害、視野障害、運動障害、まぶたの障害があります。

それぞれの障害については、自賠責保険において後遺障害の等級認定基準が定められています。

上記の目の障害は単独で生じることはあまりなく、多くは脳損傷や頸椎捻挫等に伴って生じることから、事故後一定期間経過してから症状が判明する等して事故との因果関係が争いとなる場合があります。

視力の障害
1級1号 両眼が失明したもの
2級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2級2号 両眼の視力が0.02以下になったもの
3級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
4級1号 両眼の視力が0.06以下になったもの
5級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になたもの
6級1号 両眼の視力が0.1以下になったもの
7級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になたもの
8級1号 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの
9級1号 両眼の視力が0.6以下になったもの
9級2号 1眼の視力が0.06以下になったもの
10級1号 1眼の視力が0.1以下になったもの
13級1号 1眼の視力が0.6以下になったもの
調節機能の障害
11級1号 両眼の眼球に著しい調節機能障害*1または運動障害を残すもの
12級1号 1 眼の眼球に著しい調節機能障害*1または運動障害を残すもの
  1. *2著しい運動機能障害
    「著しい機能障害」とは、調整力が障害を受けなかった他眼の2分の1に減じたものをいいます。
    両眼に障害をおった場合や他眼に調整能力に以上がある場合には、年齢別の標準力を参考にして判断されます。
視野の障害
9級3号 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
13級3号 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
眼球の運動障害
10級2号 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
11級1号 両眼の眼球に著しい運動障害*2を残すもの
12級1号 1眼の眼球に著しい運動障害*2を残すもの
13級2号 正面以外を見た場合に複視の症状*3を残すもの
  1. *2著しい運動機能障害
    「著しい運動機能障害」とは、眼球の注視野の広さが2分の1で減じたものをいいます。
  2. *3複視の症状
    「正面を見た場合」に複視の症状を残す場合には10級2号、「正面以外を見た場合」に複視の症状を残す場合には13級2号に該当します。

複視による後遺障害が認定されるためには、下記の要件を満たす必要があります。

  1. 複視の自覚症状
  2. 眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること(例えば滑車神経麻痺の診断がされている等)
  3. ヘススクリーンテストで5度以上のずれが確認できること

もっとも、後述する目の損傷の裁判例のケース2のように、自賠責の認定基準に満たない検査結果であったにも関わらず実際上の症状等から13級2号に該当すると判断した裁判例があります。

まぶたの障害
9級4号 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
11級2号 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
11級3号 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
12級2号 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
13級4号 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつ毛はげを残すもの
14級1号 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつ毛はげを残すもの

 

目の損傷の裁判例

ケース1
自賠責保険の認定:非該当→裁判所の判断:11級

ガードレールに衝突した車両の助手席に同乗していた原告が、頭部や頸部に強い衝撃を受けて頸椎捻挫の傷害を負い、事故後1か月以上経過してから両眼に調節障害を発症した事例。

原告は事故直後、眼の異常を訴えておらず、右眼がチクチクして痛くなったために眼科を受診したのは、事故から1か月経過後でした。自賠責では原告の眼の調節障害は後遺障害に該当しないと認定しました。

しかし、裁判所は原告の症状について、光をまぶしく感じたり、ピントが合わなくなる症状がずっと続いていること、医学的に頸椎ねんざにより眼の調節障害がおこることがあるとされていること、また調節障害は事故後数週間以上経過してから発症することも多いとされていること等から、原告の両眼の著しい調節障害と本件事故との間に相当因果関係があると判断し、両眼の調節障害を後遺障害11級と認めました。

(大阪地判平成13年3月23日)

ケース2
認定基準に満たない障害→裁判所の判断:13級

自転車を運転していた原告が、右方から進行してきた被告運転車両と衝突した事故。

この事故により、原告は頭部外傷や頭蓋骨骨折に加え、眼球運動障害を負いました。

自賠責の眼球運動障害(複視)の認定基準には、「ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること」が必要であるところ、原告は同目盛りで5度以上離れた位置にありませんでした。

そのため、原告の症状は上記認定基準を満たしていないことになりますが、裁判所は、原告が現に複視の症状を有していること、症状がいまだ改善していないこと、パソコンを使った仕事に支障がでていること等から、本件事故により原告に生じた眼球運動障害(複視)は後遺障害13級と認めるのが相当であると判断しました。

(さいたま地判平成24年5月11日)

耳の後遺障害

耳の障害には、大きく分けると聴力障害、欠損障害、その他(耳鳴り・耳漏)があります。

聴力障害は、頭部外傷あるいは頸部捻挫等に伴って生じることが多いです。

後遺障害の認定基準や検査方法については、裁判においても自賠責における基準に基づいて判断される傾向がありますが、事故との因果関係について争われる場合や、障害の発症が外傷によるものなのか、先天性障害が増悪したものなのか、既存障害があったからなのか等について問題となることがあります。

両耳の聴力障害
4級3号 両耳の聴力を全く失ったもの
6級3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
6級4号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7級2号 両耳聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの
7級3号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声をかいすることができない程度になったもの
9級8号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
10級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
11級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
1耳の聴力障害
9級9号 1耳の聴力を全く失ったもの
10級6号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
11級6号 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
14級3号 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
耳殻の欠損
12級4号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

聴覚障害が発生した場合、上記表のとおり症状の程度とその部位(片耳か両耳か)により両耳の場合後遺障害4級3号から11級5号、片耳の場合後遺障害9級9号から14級3号まで認定される可能性があります。

難聴の検査方法は、①鈍音聴力検査及び②語音聴力検査により行うこととされています。

具体的な方法は、①鈍音聴力検査については日本聴覚医学会制定の「聴覚検査法(1990)」により行うこと、②語音聴力検査については日本オージオロジー学会制定の「標準聴力検査法 Ⅱ語音による聴力検査」により行うべきこととされています。

耳の損傷の裁判例

ケース1
被告側:因果関係否定→裁判所の判断:後遺障害11級認定

原告運転のタクシーが信号待ちで停車していたところ、被告運転車両が後方から追突した事故。

この事故で、原告は頚部・腰椎捻挫の傷害を負い、耳鳴り・難聴を発症しました。

原告が耳鳴りや難聴の症状について治療を受け始めたのは、事故から1年8か月後であり、被告側は、本件事故直後から難聴が始まったのであればもっと早い時期に耳鼻咽喉科に通うはずであること、本件事故が軽微であること、他覚的聴力検査が施行されていないこと等を理由に難聴の症状と本件事故との因果関係を否定しました。

しかし、裁判所は、本件事故の態様、原告の負傷部位や負傷の程度、難聴を訴えた時期や難聴に対する治療を受けるに至った経過、本件事故前の状態、既往歴等を検討した結果、原告は本件事故により、頚部・腰椎捻挫の傷害を負い、それにともない耳鳴り・難聴の症状が発現したと認め、後遺障害11級に該当すると認めるのが相当であると判断しました。

(大津地判平成9年1月31日)

ケース2
自賠責保険の認定:14級→裁判所の判断:11級

自転車を運転していた原告が、右方から進行してきた被告運転車両と衝突した事故。

高速道路において、被告運転車両が原告運転車両を追い越した直後にスリップして、非常帯の壁に激突し、その反動で原告車両に衝突した事故。

この事故で、原告は右難聴、右耳鳴りの症状が残存し、自賠責にて後遺障害等級14級と認定されました。

裁判所は、後遺障害等級の認定基準について、14級は「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」、11級は「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」と定められているところ、原告の純音聴力検査の結果は、ステロイド剤の投与のころに一時期比較的良好な時期があったものの、それ以外は、一貫して80デシベル以上であることからすれば、物損請求事件や本件訴訟における尋問状況を考慮しても、少なくとも後遺障害等級11級に該当するものと認めるのが相当であると判断しました。

(岡山地判平成21年5月28日)

 

鼻の後遺障害

9級5号 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

 

口の後遺障害

咀嚼・言語の機能障害
1級2号 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3級2号 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
4級2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
6級2号 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
10級3号 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
歯牙の障害
10級4号 14 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号 0 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号 7 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級5号 5 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号 3 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

 

脳の後遺障害等級

高次脳機能障害
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

脳の障害認定に当たっては、画像所見が重視されています。
事故直後から症状固定までの経過観察中のCT・MRI画像が認定に使用されています。
また、受傷直後の意識障害の検査記録(JCSスケール)や周りの親族による事故前との性格を比較した「日常生活報告書」も主要な医証とされています。