【減額事由・過失相殺】 損害賠償の範囲と損害額の算定方法
Q 交通事故の損害を請求するにあたって、損害の額が減額されるのはどのようなときでしょうか?また、「過失相殺」とはどのようなときに認められるのでしょうか?
過失相殺とは?
交通事故の場合、加害者だけでなく被害者にも落ち度(過失)があります。そのような被害者の過失を損害額から相殺、つまり減額することを過失相殺といいます(民法722条)。
交通事故に遭った際、よく10:0や8:2といった言葉を聞くかもしれませんが、過失相殺の過失割合を指しています。
誰の過失が認められる?
被害者が幼い子供のようなときはどうでしょうか?判例上、被害者に事理弁識能力があれば過失相殺が認められています(最判昭和39年6月24日)。事理弁識能力とは行為の善し悪しが分かる能力で、裁判例ですと、約六歳であるとされています。確定的な基準ではありませんが、約六歳以上の子供であれば、過失相殺がなさる可能性が高いといえます。
また、被害者本人でなくとも、身分上社会生活関係上一体をなすものの過失も相殺されます(最判昭和42年6月27日)。たとえば、先ほどの例で、被害者が事理弁識能力のない幼い子供であっても、その母親の監督に過失があれば、相殺されることがあります。また、夫の運転する自動車に同乗中、事故に遭った妻の損害賠償請求だと、夫の過失が考慮されます。
過失相殺の基準
過失割合の算定は最終的に裁判所の判断です。しかし、損害額の算定と同じように算定基準も出されています。その一つである、日弁連交通事故相談センターの認定基準(20訂版)を見てましょう。
たとえば、信号機のある交差点の横断歩道上で、車が歩行者をはねた場合、車が青信号、歩行者が赤信号だったときには、過失割合は3・7となります。歩行者のほうが過失割合が高くなっているのが分かります。
以上は基本要素です。過失相殺の基準では、基本要素・修正要素に分けられており、修正要素があれば、そこから約10%~20%加算、減算されます。たとえば、先ほどの例の中で、被害者が「老人」や「幼児」であれば被害者の過失割合が減算されますし、事故が「夜間」であれば加算されます。
自賠責、任意保険と過失相殺
自賠責保険や任意保険と過失相殺はどのような関係に立つのでしょうか?自賠責保険は強制保険であり、被害者保護という社会的目的があるため、被害者に重過失がない限り、過失相殺されません。さらに、被害者に重過失がある場合であっても死亡事故の場合は、20%,30%,50%のいずれかですし、傷害事故の場合は、一律20%です。
任意保険の場合は重過失のような限定もなく、各保険会社は基準を参考にして減額します。
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