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下請負人の事故と元請負人の責任

Q 家の近所で、家の建て替えが行われているのですが、息子がその工事車両にはねられ怪我をしました。工事を行っているのは、下請業者なのですが、元請業者にも責任を取ってもらえるのでしょうか?また、建て替えを依頼している方にも責任は取ってもらえるのでしょうか?

元請と下請の関係

建築

注文者と請負契約を締結した元請負人が、さらにその仕事の完成を下請させた場合、元請負人と下請負人間にも請負契約が成立します。

(1)注文者への責任

下請負人が注文者に損害を与えた場合、下請負人は元請負人の手足として利用されている履行補助者にあたるので、元請負人は請負契約違反として、注文者に対し、債務不履行責任を負います。

 

(2)第三者への責任

一方で、下請負人が注文者以外の第三者に対して損害を与えた場合、必ずしも元請負人は第三者に対し、責任を負うわけではありません。なぜなら、下請契約との関係で、注文者(元請負人)は請負人(下請負人)がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任は無いと規定されているからです(民法716条)。

そうすると、自動車事故の場合、元請負人が責任を負うのは、使用者責任(民法715条)と運行供用者責任(自賠法3条)の場合が考えられます。

 

運行供用者責任

交通事故の被害者は、自賠法3条の「運行供用者」に対し、損害の賠償を請求することができます。「運行供用者」にあたるかは、前述のように「運行支配」と「運行利益」によって判断されます。

 

使用者責任

民法715条は、被用者が事業の執行について他人に損害を与えた場合、使用者は損害賠償責任を負うと規定しています。請負契約の場合、当然に元請人と下請人との間に使用関係が認められるわけではありません。そのため、常に元請負人に使用者責任が発生するわけではありません。もっとも、716条により、注文や指図に過失があった場合は、注文者たる元請人は責任を負います。

 

判例

最高裁は、元請人と下請人の関係について、

① 元請人と下請人の契約内容
元請人が主導権を取り、下請業者の独自性に欠けて、実質的には元請人の被用者と同様といえるような契約内容であれば、運行供用者責任が認められます。
② 専属的従属関係
専属的従属関係が認められれば、実質的には元請人の被用者と同様に、運行供用者責任が認められます。
③ 企業間の一体性
出資、役員派遣、営業財産の貸与、自動車保管場所の提供といった企業としての緊密な一体性が認められる場合は、運行供用者責任が認められます。
④ 具体的指揮監督関係
下請作業の際、現場で、元請人が下請人を指揮監督している場合、程度のよって、元請人の運行供用者責任が認められます。

他にも、あらゆる事情を考慮して、元請人と下請人の実質的な関係を見て、元請人に「運行支配」「運行利益」が認められる場合は、元請人にも運行供用者責任が認められます。

本件

下請業者に対しては、下請業者が車を運転している以上、運行供用者責任(自賠法3条)の追求が可能です。また、不法行為責任(民法709条、715条)を追求することができます。

元請業者に対しては、前述した事情を考慮して、元請人に「運行支配」「運行利益」が認められる場合には、運行供用者責任を追及することができます。また、注文又は指図について元請人に過失があれば、責任(民法716条)を追及することができます。

建て替えを依頼している注文者に対しては、注文者の注文又は指図について過失がない限り、責任を追及することはできません(民法716条)。

 

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