裁判手続を依頼したいのですが?
Q 裁判手続を依頼したいのですが?
交通事故の損害賠償について示談交渉では解決できない場合には裁判手続による解決を検討することになります。
交通事故の損害賠償の解決を図るための裁判手続きとしては、主として、民事調停と訴訟の2つがあります。
このうち民事調停は、調停委員という裁判所の専門機関の関与はあるものの、あくまで示談交渉と同様、当事者間の話し合いによる解決を図るための方法となるためこの段階では、必ずしも弁護士に依頼する必要ありません。しかし、訴訟手続を選択することになれば、被害者本人だけの対応は難しく弁護士に依頼した方がよいでしょう。
民事調停
交通事故の損害賠償に関する民事調停は、賠償金について、裁判所の専門機関である調停委員の関与の下、当事者間での賠償金額についての話し合いの機会が設けられ、最終的に合意に至れば、調停が成立し、調停調書が作成され、これは判決と同一の効力を持つことになり(民事調停法16条、民事訴訟法267条)、相手が任意に賠償金の支払をしなかった場合には調停調書に基づいて強制執行することができます。この調停は、原則として、加害者の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てることになりますが、人身事故の場合には被害者の住所地を管轄する簡易裁判所にも申し立てることができます(民事調停法3条、32条の2)。
この民事調停という手続は裁判手続とは異なりあくまで当事者間の話し合いの延長のため調停委員の関与もあることから必ずしも弁護士を代理人として立てる必要はありません。
調停がうまくいかなかった場合
民事調停を含めた当事者間お合意により解決することができなかった場合の最終手段として訴訟手続があります。示談交渉が決裂した場合、予め民事調停を起こしておかなければ訴訟提起できないわけではなく、いきなり訴訟提起することは可能です。訴訟になれば、裁判所が判決により賠償金額の内容を決めて、当事者はこれに拘束されることになり、紛争は一方的かつ強制的に解決されることになります。もちろん、訴訟は、被害者本人だけで行うことができます。
しかし、訴訟手続は、法律に従い厳格に進められる手続であり、そこには法律に関する技術的あるいは専門的知識が問われ、その勝敗の責任は訴訟を進める当事者に帰する部分が大きいため、できる限り、訴訟の専門家である弁護士に依頼した方がよいでしょう。
その他の注意点
弁護士に訴訟活動を依頼した場合には、弁護士費用に加え、訴訟手続に要する印紙代や切手代などの諸実費が必要となります。したがって、訴訟上の和解あるいは判決に基づいて支払われることになる賠償金額から訴訟に要した費用は実質的に控除されることになる点は予め知っておくべきです。そこで、弁護士に訴訟を依頼する場合には予め訴訟のために掛かる費用について十分に確認しておくのがよいでしょう。
また、弁護士費用特約を利用することができるかについて自身の加入する保険会社に確認しておくことも忘れないようにしましょう。なお、判決により賠償金の支払を命じる場合には弁護士費用として認容額の10%が損害として認められます。
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