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歩行者側が「加害者」に?

弁護士 渡邊 佳帆

1 歩行者は事故を起こしても責任を負わない?

赤信号にもかかわらず、横断歩道をうっかり渡りそうになったときなど、「歩行者だから大丈夫だって~」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

歩行者は、交通事故に遭っても、責任を負うことはないと思っていらっしゃる方もいるかもしれません。

しかし、歩行者側に過失があれば歩行者もその過失の分(過失割合)に応じて責任を負わなければなりません。

たしかに、歩行者保護の観点から、歩行者と自動車や自転車が交通事故を起こした場合は、一般に、自動車や自転車側の過失割合が大きくなるケースが多くなっています。

しかし、場合によっては、歩行者側の方が過失割合が大きくなることもあります。

この記事では、歩行者側の過失割合が大きくなる場合を紹介します。

2 歩行者側の過失割合が大きくなる場合

(1)歩行者の赤信号無視(別冊判例タイムズ39 Ⅰ-5)
歩行者の赤信号無視

歩行者が赤信号で横断歩道の横断を開始し、自動車側の信号が青信号だった場合の事故は、基本の過失割合が歩行者70%:自動車30%です。

自転車との事故の場合は、過失割合が変わります(別冊判例タイムズ39 Ⅱ-5)。

歩行者の赤信号無視(自転車)

歩行者が赤信号で横断歩道の横断を開始し、自転車側の信号が青信号だった場合の事故は、基本の過失割合が歩行者80%:自転車20%です。

(2)横断歩道の付近(別冊判例タイムズ39 Ⅰ-33)
横断歩道付近での事故

横断道路だと信号待ちをしなければならないから、横断歩道を渡らないで、車道をつっきる、という方もいらっしゃると思います。

片側2車線以上ある幹線道路の場合は、横断歩道の端から外側におおむね40~50m以内の場所、それ以外の道路では横断歩道の端から 外側におおむね20~30m以内の場所を歩行者が渡って自動車との事故が起きた場合、基本過失割合は歩行者30%:自動車70%ですが、状況によって過失割合の修正が入ります。

・夜間の横断→歩行者側の過失が+5%
・幹線道路の横断→歩行者側の過失が+10%
・横断禁止の規制あり→歩行者側の過失が+10%
・歩行者が自動車の直前又は直後で横断した、理由なく立ち止まった、後退した
→歩行者側の過失が+10%

そのため、状況によっては、過失割合が歩行者65%:自動車35%になります。

3 過失割合の影響とは

過失割合は、相手方(自動車・自転車側)から受け取ることができる賠償金額に影響します。

自動車・自転車と歩行者との事故は、歩行者側に甚大な影響が出ることが多いです。

しかし、歩行者側の過失割合が大きいと、その分だけ治療費や慰謝料等、受け取ることができる損害賠償金の額が減ります。

例えば、身体に重い障害が残った場合は、逸失利益(働けなくなったことによって、失った収入)を相手方(相手方の自動車保険会社)に請求することになります。 逸失利益の金額が数千万円にのぼったとしても、歩行者側の過失割合が70%であれば、過失相殺によって70%減額されてしまう可能性が高いです。

そして、相手方の自動車・自転車が事故によって故障した場合、修理代(市場価値が修理代を下回る経済的全損の場合は、市場価値)のうち、自分が過失割合を占める分の金額を支払わなければならなくなります。

たとえば、自動車と歩行者の事故が発生し、自動車の市場価値が300万円で、100万円の修理代がかかり、歩行者側の過失割合が70%だったとします。 この場合、歩行者は自動車の所有者側から、70万円を請求されます。

自動車同士の事故であれば、相手の自動車に生じた損害について、自分が加入している対物賠償責任保険(自動車保険)から保険金が支払われることになるでしょう。

しかし、歩行者には自動車保険はありません。もし個人賠償責任保険に入っていれば、その保険会社から修理代が支払われる可能性があります。 個人賠償責任保険は、火災保険や傷害保険、自動車保険などの特約として契約する場合が多くなっています。

こういった保険に入っていなければ、修理代の70%である70万円は、歩行者が自分で支払うことになるか、相手方から受け取る賠償額との間で調整することになるでしょう。

4 まとめ

交通事故では、「歩行者=被害者」「自動車=加害者」と単純に決まるわけではありません。歩行者側にも過失があり、相手の車両等に損害を与えた場合には、歩行者側が相手に対して損害賠償責任を負うこともあります。

歩行者と自動車・自転車の事故であっても、歩行者側の過失割合が大きくなることもあります。

そうでなくても、損害賠償額において、過失割合の影響は小さくありません。

歩行者であっても、交通ルールを守り、事故に遭わないよう心掛けることが必要です。

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