過失損害
Q 信号機による交通整理の行われていない見通しの悪い交差点における直進車同士の出会い頭の衝突事故につき、私は優先道路、相手は一時停止違反です。それなのに、保険会社は、私にも過失があるといって、過失相殺といいます。過失相殺とはどういうことなのでしょうか?
過失相殺
1. 過失相殺
過失相殺とは、損害を公平に分担するために、民法722条2項によって、被害者に何らかの過失があるときに、その賠償額を減少させることを言います。過失相殺をするか否かは裁判官の自由な判断に任せられています。もっとも、裁判官は「損害賠償の額」を定めることについて斟酌できるのみで、責任の有無については斟酌することはできません。
したがって、被害者の過失がどれだけ大きくても、加害者に過失がある限り、加害者が賠償すべき損害賠償額全部を免除することはできません。
2. 過失相殺の基準化
裁判で過失相殺するかどうかは、裁判官の裁量に任されています。しかし、交通事故は同一の事故類型の事故が非常に多く起こり、同じような事故について 過失相殺率が裁判官によって全く異なるというのは、法的安定性の検知や事件解決の予測可能性の観点から望ましくありません。
そこで迅速・公平な処理のために一般的・客観的基準が必要となります。
信号機の設置されていない交差点における車両同士の出会い頭の衝突事故の場合
- 左方車優先 他に優劣を定められないときは左方車が優先 過失割合は、左方車40、右方車60
- 広路車優先 広い道を走行してきた車の方が狭い道を走行してきた車に優先 過失割合は、広路車30、狭路車70
- 非停止規制車 一方に一時停止の規制がある場合、一時停止の規制のない道路走行車が優先 過失割合は、停止規制車70、非停止規制車20
- 優先車優先 一方が優先道路の場合、優先道路走行車が優先 過失割合は、優先車10、劣後車90
このようにして定められた基本割合に、幹線道路か否か、夜間の見通し状況、大幅な速度違反の有無、大型車か小型車か、商店街か住宅街か、老人か子どもか、過失はあるか、などを考慮して最終的に過失割合が定まるようになります。
本件
事故の主要な原因は加害者車両運転者が一時停止の標識を看過し安全確認を怠って減速せずに交差点に進入した点にあるが、他方優先道理を走行していた被害車両運転者にも右方の見通し不良の交差点に進入しようとするに当たり他の車両の有無・動静を十分に注意して徐行で交差点を進行しなかった過失が認められます。
したがって、優先車10、劣後車90の過失割合が認められると考えられます。
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