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任意保険に入っていないということ

弁護士 岩崎 将之

2020年において、我が国の自動車保有台数は、8,000万台を突破しました。

一般財団法人自動車検査登録情報協会が集計した2019年3月末時点における自家用乗用自動車の世帯当たり普及台数は1.052台となり、今や一家に一台自動車を保有している状況になっています。

写真

しかし、ある保険会社の調査によると、2019年3月時点における任意保険の加入率は乗用車・二輪車・商用車などすべての車両を対象に含めた場合、対人賠償において74.8%、対物賠償において74.9%にとどまり、4台に1台の自動車は任意保険に加入していないということになります。

任意保険に加入していないとどうなるか、被害者側・加害者側それぞれの立場から、お話させていただきます。

1. 被害者側の視点(加害者が任意保険に加入していなかった場合、被害者側の救済が困難であること)

1 自賠責保険によっては、すべての損害を補償できるわけではないこと

紙幣とキャッシュカード

自賠責保険は、すべての自動車に加入義務があります。

そのため、人身事故の場合、仮に加害者が任意保険に加入していなかったとしても、加害者に対し、自賠責保険に基づき、治療費等を請求することができます。

しかし、自賠責保険からの支払金額には、下記のとおり、限度額が設けられています。

支払限度額
障害による損害 最高120万円
障害による損害

①神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合

  • 常時介護が必要な場合(第1級):最高4,000万円
  • 随時介護が必要な場合(第2級):最高3,000万円
②①以外の後遺障害の場合
  • 後遺障害の程度により
    (1級)3,000万円~(14級)75万円

死亡による損害 最高3,000万円

したがって、自賠責保険によって、すべての損害を補償できるわけではないのです。

2 自賠責保険は人身事故に限られること

また、自賠責保険の適用があるのは、人身事故の場合に限られます。

すなわち、物損事故の場合には、自賠責保険の適用を受けることができず、加害者に資力がない場合には、修理代の賠償を得られない可能性があるのです。

2. 加害者側の視点(任意保険に加入していなかったことによる加害者側のリスク)

パトカー

任意保険に加入していない理由は様々あるとは思いますが、そのリスクは考えておりますでしょうか。

上記1の裏返しにもなりますが、任意保険に加入していないということは、自賠責保険を超える人身事故や物損事故の賠償金額については、自己負担になるということです。

札束とガベル

交通事故の賠償金額は、事故態様によっては、数百万円~何千万円にのぼることも少なくありません。

任意保険に加入していないということは、かかる賠償金を自己の資金で支払う必要があるのです。

3. 任意保険はなるべく加入することを勧めます。

渋滞

自動車が普及し、自動車は私たちの家庭において無くてはならないものとなりました。

しかし、先日の池袋の事故のように、自動車は便利である反面、時には人の命をも奪いかねない危険な凶器であるということを忘れてはいけないと思います。

また、賠償金を支払えないということは、被害者に泣き寝入りを迫るということです。

弁護士という職務上、交通事故の事件に触れる機会も多いですが、やはり、加害者が任意保険に加入していないと、被害者に苦労を強いることが多いのが実情です。

任意保険に加入していない方にもそれぞれ事情はあると思いますが、自動車を運転するという決断をしている以上、今一度、保険につき見直していただければ幸いです。