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交通事故と時効

更新日:2026年8月17日

1. 請求権には時効がある

何らかの請求権には、民法上「時効」があります。これは交通事故を原因とする損害賠償請求も例外ではありません。

交通事故の損害賠償請求権は、民法上、不法行為(民法 709 条)という条文に基づくか、自動車損害賠償保障法に基づいて請求されます。

現行の民法(令和2年改正後の民法)では、不法行為による損害賠償請求権は、人身損害については、被害者が損害および加害者を知った時から 5 年間行使しないときは、時効によって消滅するとされています。物損については 3 年です。

そのため、加害者が事故の直後から逃げていて、誰が加害者か分からない場合には、その分からない間は時効期間が進みません。

また、損害がはっきりしない場合にも、その間には時効期間が進まないことがあります。

過去の裁判例では、交通事故による後遺障害がある場合に、後遺障害に関する損害の時効は、症状固定の診断を受けた時を「損害を知った時」として、この時点から時効期間が進行するとしたものもあります。

ただし、治療をしても改善が見られない状態が続いているにもかかわらず、いつまでも後遺障害の診断を受けないと、症状固定の診断を受けた時よりも前の時点で、実際に症状固定の状態になっていたと判断される可能性は否定できません。

2. 承認によって時効の更新

消滅時効の問題に関して、「承認」という問題があります。

現行の民法(令和2年改正後の民法)では、152 条で、相手方による「権利の承認」があったときは、その時から時効が更新されることになっています。

時効が更新されますと、まだ一から時効の期間が進みますので、債権が時効で消滅するまでの余裕ができます。

ただし、この「承認」になっているかどうかに争いが生じ、ときには「承認」として認められず、賠償請求権が時効で消滅してしまうことがあります。

3.承認が認められず、賠償請求権が時効で消滅した例

平成 29 年 11 月に出された大阪地方裁判所の判決で、この点に争いが生じ、判断された例があります。

この件は、事故による怪我・障害が重大で、意識障害が残り、最終的には成年後見人を選任しなければならなくなった事案でした。

意識がなく、成年後見人までつけなければならないような重大な障害が残ったような場合には、症状固定の診断も難しく、将来の介護をどうするかといった問題も生じますので、時間がかかることが多いと思われます。

例に挙げた事案でも、平成 20 年に交通事故が発生してから、平成 28 年に訴訟提起されるまで、約 8 年間が経過しています。

この事案では、原告側は被告側により債務が承認されている根拠として

  1. (1)被告側の保険会社が、過失割合の協定及び支払方法についての協議を求める旨を記載した書面を送った
  2. (2)被告側の保険会社が、治療費の賠償に応じ続けた
  3. (3)原告側が既払金の明細書の送付を依頼した際に、被告側保険会社が「今後ともよろしくお願いします。」と述べた
  4. (4)既払金の明細書とともに、過去に送った書面(協議を求める旨が記載されている)を改めて送った

といった事柄を挙げていました。

これに対して、裁判所は

  1. 1.保険会社が最後に送った書面に、債務が存在することを前提に示談交渉をする意思があることをうかがわせる記載がない
  2. 2.「よろしくお願いします。」と述べた点も社交辞令以上の意味をもつとは理解されない
  3. 3.過去の書類の送付はあくまで過去の既払金の明細を明らかにする趣旨で参考送付されたものにとどまると考えられる

ということで、被告側の保険会社による最終の支払日から 3 年(改正前民法の時効)が経過し、時効が完成してしまったと判示しました。

このように、交通事故で、怪我や障害の程度が重大なときには、事故の発生からかなり長い期間、交渉することが難しい場合もあります。

この裁判例では、少なくとも保険会社が最終の支払いをした日までは、債務が承認されており、消滅時効の起算点が到来しないと判断しているようにも読めますので、確実ではありませんが、この点も重要な点になると思われます。

4. まとめ

人身損害の時効は5年、物損は3年です。

いずれにしても、交通事故は事故の発生から 3 年以内に解決するか、訴訟を起こした方が無難でしょうから、早いうちから専門家に相談して、準備を進めるのがいいでしょう。

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