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交通事故と成年後見の必要性

弁護士 杉浦惠一

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最近では、高齢化の進展とともに、成年後見が一般に浸透してきていると思います。
しかし、成年後見は、必ずしも高齢の方が認知症になったときのみに関係してくるだけとも限りません。

交通事故の場合であっても、事故が重大になればなるほど、成年後見が関係してくることがあります。

今回は、交通事故と成年後見の関係、必要性について説明したいと思います。

まず、交通事故で被害にあった場合に、どのような請求をするのでしょうか。

交通事故の被害の請求

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一般的には、治療費、通院(傷害・けが)の慰謝料、仕事を休んでいれば休業損害、といった損害の賠償請求をします。乗っていた自動車などの物が壊れた場合には、修理費などの賠償請求をします。

また、事故が重大で、けがの程度が甚大なときには、後遺障害が残る可能性があります。

後遺障害が残った場合には、後遺障害の重さ(等級)によって後遺障害の慰謝料を請求したり、仕事をしていれば、後遺障害の程度によって仕事ができなくなった程度によって逸失利益を賠償請求することがあります。

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ちなみに、後遺障害の1級の場合には、両目が失明したような場合や、両足を切断するようなけがの場合、神経系統の機能または精神に著しい障害が残ったことで常に介護が必要な状態になった場合など、色々な場合が考えられます。

例えば後遺障害の1級に該当するような重大なけがをした場合であっても、両目が失明したような場合であれば、被害者が自分で判断する能力は残っています。

そのため、周りの助けがあったり、弁護士に代理を依頼することによって、どのような請求をするかといったことは、被害者が自分で判断することができます。

しかし、被害者が自分で判断できないような状態になったら、どうでしょうか。

被害者が判断能力を失っていたら…?

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例えば、高次脳機能障害という言葉があり、交通事故によるけがが脳に発生し(脳挫傷や脳器質的障害など)、被害者が遷延性意識障害(意識が目覚めずに、寝たきりの状態になってしまうこと)になってしまうと、被害者は自分のことを自分で判断することができなくなってしまいます。

意思の疎通ができない状態になったら

遷延性意識障害(意識が目覚めない状態)でないとしても、交通事故によって脳に障害が残った場合には、話せず、物事を理解できない、動くことはできるが意思の疎通ができない、といった状態になってしまう場合もあります。

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このような高次脳機能障害で重大な障害が残った場合には、自分で判断することができませんので、誰かに代わりに判断してもらう必要があります。

では、誰が代わりに判断する権限があるのでしょうか。

被害者の代わりに判断する人を立てる

被害者が未成年者であれば、親権者が法定代理人になります。

しかし、被害者が成人であった場合、成人であれば自分のことは自分で判断できることが前提ですので、親族であっても勝手に代理することができません。

こういった場合に、判断できなくなってしまった被害者の代わりに、裁判所に成年後見を申し立て、成年後見人を選任してもらうことになります。

成年後見人は、家族などの親族がなることもできます。

損害賠償が多額な場合は、親族を選任しないことも

しかし、成年後見が必要になるほどの重大な事故であれば、一般的に損害賠償額も多額になりますので、多額の金額を扱うことが予想されます。

このような場合に、裁判所は、必ずしも親族を成年後見人に選任するとは限りません。

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裁判所の運用・判断は、時期によって変わり、親族の意向を反映する時期もあれば、そうでないこともあります。

裁判所の判断

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交通事故によって重大な障害が残り、賠償請求をするために成年後見が必要になった場合ですが、裁判所の後見人に関する判断としては、概ね、

  1. 1. 親族による成年後見人は認めず、専門職(弁護士や司法書士など)を後見人として選任する。
  2. 2. 親族を成年後見人として選任するが、後見監督人も選任する。
  3. 3. 親族を成年後見人として選任するが、後見制度支援信託を使う必要が出てくる。
  4. 4. 成年後見申立を代理した弁護士が成年後見人に推薦され、選任される。

といったような、色々なパターンが考えられます。

成年後見人はあくまで裁判所が選任しますが、誰を成年後見人に選任するかについては、異議は申し立てられないことになっています。

交通事故であっても、被害者に重大な後遺障害が残るような場合には、最初から成年後見をどうするかも視野に入れて、準備を進めた方がいいでしょう。