有給休暇を使用した場合に休業損害は認められる?
交通事故で負った傷害の治療のために、有給休暇を使用することがあると思います。
ご相談者の中には、有給休暇を使用した場合は、実際には給料の減少がないため、
加害者(加害者が加入する任意保険会社)から、休業損害として認めれず、補償を受けられないのではないかと心配される方が多くいらっしゃいます。
しかし、交通事故にあわなければ、有給休暇を旅行や休養などのために使用できたにもかかわらず、
交通事故にあったばかりに、せっかくの有給休暇を治療のために使用せざるを得なくなったわけですから、治療のための有給休暇の使用が休業損害として認められず、補償を受けられないのは不当といえます。
そこで、交通事故の実務では、治療のために有給休暇を使用した場合、
現実の収入減がなくても、休業損害として認められ、補償を受けることができることとされています。
ただし、交通事故の発生からかなり期間が経過した後に、有給休暇を使用した場合は、交通事故と関係なく、娯楽のために取得したと判断されて、休業損害として認められない可能性があるので、注意が必要です。
東京地裁 平成6年10月7日判決 [損害賠償請求事件 平成5年(ワ)第7562号]
要旨
交通事故受傷による8日間の欠勤期間のうち6日間を有給休暇に振り当てた場合に、
有給休暇の費消は、財産的損害として賠償請求し得るとして、1日の有給休暇の持つ財産的価値につき被害者の年収を1年間の日数で除した額によって算出した事例
事実及び理由
証拠(略)によれば、原告Xは、本件事故当時会社員として稼働し、
平成3年度は714万3582円の収入を得ていたところ、
本件事故により平成4年7月25日から翌月11日までの期間に8日間勤務先を欠勤したこと、
原告Xは右欠勤期間のうち6日間を有給休暇を振り当てたため給与は全額支給されて計算上の休業損害は生じていないことが認められる。
ところで、有給休暇はその日の労働なくして給与を受けるもので労働者の持つ権利として財産的価値を有するものいうべく(原文ママ)、
他人による不法行為の結果有給休暇を費消せざるを得なかった者はそれを財産的損害として賠償請求し得ると解するのが相当である。
証拠(略)によれば、原告Xは右有給休暇すべてを本件事故による受傷の治療のための通院、事情聴取のための警察署への出頭などに当てていることが認められるから、
不法行為の結果有給休暇を費消せざるを得なかったというべく、
1日の有給休暇の持つ財産的価値は原告Xの年収を1年間の日数で除した額によって算出し、
原告Xが有給休暇8日分(原文ママ※「6日分」が正しいと思われます。)を費消することによる損害は11万7428円と認めるのが相当である。
(計算式)7143583÷365×6=117428
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