外貌の醜状障害 後遺障害等級と男女差について
頭部、顔面部、頸部など、上肢及び下肢以外の日常露出する部分に瘢痕(傷跡)が残ってしまった場合、外貌醜状として後遺障害認定がなされます。
従前、男女を区別して、社会生活において醜状障害により受ける精神的苦痛を考慮し、女子のそれが男子に比較して大であるという社会通念に基づき、後遺障害等級に男女差を設けていました。
しかし、京都地裁平成年5月27日判決(自保ジャーナル1826)が、外貌の醜状障害に関する後遺障害等級表の男女間における差別的取扱いに付き、著しく不合理であって憲法14条1項に違反すると判断したのを契機として、平成23年2月1日、労災が障害等級の男女差を解消し、外貌醜状に関する等級認定を次のように改めました。
改正前 | 改正後 | ||
---|---|---|---|
障害等級 | 身体障害 | 障害等級 | 身体障害 |
第7級 | 12 女性の外貌に著しい醜状を残すもの | 第7級 | 12 外貌に著しい醜状を残すもの |
第9級 | – | 第9級 | 11の2 外貌に相当程度の醜状を残すもの(新設) |
第12級 | 13 男性の外貌に著しい醜状を残すもの 14 女性の外貌に醜状を残すもの |
第12級 | 13 削除 14 外貌に醜状を残すもの |
第14級 | 10 男性の外貌に醜状を残すもの | 第14級 | 10 削除 |
醜状の程度としては、具体的に以下の基準が用いられます。
第7条 著しい醜状 |
|
---|---|
第9条 相当程度の醜状 |
原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線上痕で、人目につく程度以上のものをいう |
第12条 単なる醜状 |
|
醜状の程度については、主治医が作成した後遺障害診断書記載内容だけでなく、自賠責損害調査事務所における医師の面談によって判断されます。
なお、外貌の醜状障害が後遺障害として認定されたとしても、必ずしも、自賠責等級認定表に定められた労働能力喪失率が認められるわけではありません。
具体的な職業、業務内容、醜状の部位・程度等によって、醜状障害が、実際に従事する業務を遂行する上でどのような影響を及ぼすのかを主張立証する必要があります。
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