示談の結果、保険会社に治療期間の延長に応じてもらえた事例
事故の状況
Aさんは、幹線道路を走行し、赤信号のため停止していたところ、相手方車両に後方から追突されました。結果として、 Aさんはむち打ち症になりました。
ご依頼内容
この件は、保険会社が対応しておりました。本件事故後、Aさんは整形外科と接骨院に通院して治療を続けていたところ、通院5か月目あたりで、保険会社から、治療費の内払いを打ち切るとの話をされたことから、弊所にご相談に来られたとのことでした。
解決までの道のり
本件の受任後、保険会社から診断書を取り寄せ、治療内容や後遺障害の可能性等を検討しました。その結果、診断書上、しびれや痛み、頭痛等は改善しており、後遺障害の可能性は低いとの判断に至りました。もっとも、Aさんは、まだ痛みが残っており、この段階で打ち切られるのは納得がいかないとのことでした。そのため、保険会社に対し、痛みが残っていることから、あと1ヶ月間、治療期間を延ばして治療費を支払うことを打診したところ、保険会社がそれに応じたため、1ヶ月間治療を継続してもらいました。
解決の内容
治療終了後、通院交通費として自宅から通院先の往復ガソリン代、赤い本の別表Ⅰから算定される通院慰謝料を保険会社に請求しました。
これに対し、保険会社からは、通院慰謝料について、別表Ⅰではなく、別表Ⅱで算定される額で示談に応じてほしい旨の回答がございました。そのため、MRI画像上むち打ち症の所見(他覚的所見)が出ていること、治療費内払い終了後も痛みが残存していることから自費で通院していることを考慮して、別表Ⅰと別表Ⅱの中間の額で示談することを提案しました。結局、この提案に保険会社が応じたため、示談に至りました。
所感
治療費の内払いはあくまで保険会社の任意で支払っているものなので、内払いの継続を要求することは容易ではないのですが、期限を区切って打診すると応じてくれる場合もあり、本件では応じてもらうことができました。
また、通院慰謝料の算定方法について、赤い本(日弁連交通事故センター東京支部編『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の別表Ⅰで算定するか別表Ⅱ(別表Ⅱの3分の2程度)で算定するかが争点となりました。
通院慰謝料に関しては、「むち打ち症で他覚的所見がない場合等」には別表Ⅱを用いるとされておりますが、具体的にどの場合にこれが当てはまるのかは明確には定まっておりません。保険会社の対応としては、むち打ち症の場合には別表Ⅱで算定すべきとすることが多く、裁判例上も骨折等のないむち打ち症は別表Ⅱを用いることが多いため、直ちに別表Ⅰで主張することは難しいです。もっとも、画像所見や検査所見といった他覚的所見の内容次第では、別表Ⅰで算定することが認められる場合もあります。
本件では、MRI画像上むち打ち症の所見が出ている程度であり、別表Ⅰで算定すべきと強く主張できるものではなかったのですが、「事例」で述べた諸事情を主張したところ、最終的には保険会社の提示額よりも増額した額で示談することができました。
事件解決までに要した時間
3か月
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