
ゴルフ場での事故
ゴルフ場での事故
・ゴルフ練習場で隣のプレーヤーのゴルフクラブが当たってケガをした
・ゴルフ場で、同伴プレーヤー、隣接プレーヤーのボールが当たってケガをした
スポーツ一般について、その性質上、人身に対する一定の危険性が生じることは避けられないことであり、プレーヤー等においても、一定の危険が存在することは認識・認容しているものと思われます。
もっとも、ゴルフ競技は、ボクシングのような直接攻撃型のスポーツや、サッカーのように競技中の接触が不可欠なスポーツとは異なるので、危険受任論(通常伴う加害行為は、明示ないし黙示による被害者の承諾があり、正当行為として違法性を阻却するという理論)が適用されず、通常の過失責任を判断すべきです。
ゴルフプレーヤーはどのような注意義務を負うのでしょうか
この点、ゴルフプレーヤーの打球がキャディの左顔面を直撃し失明させた事案について、名古屋地裁平成14年5月17日判決(判例時報1897号124頁)は、
「ゴルフ競技においては、使用される球の性質上、競技者の打った球が他の者に当たった場合、重大な傷害を負わせるおそれがあることは明らかであるから、競技者が球を打つ場合は、四囲の状況、殊に飛球の方向や距離から推測して、同伴競技者等に当たらないように十分注意を払う義務がある。一方、ゴルフ競技は、複数の競技者相互間で規則や礼儀を守ることを前提に、互いの信頼関係の上に立って行うスポーツ競技であるのだから、ある競技者が打球動作に入る場合は、他の競技者においても、その妨害となる行為を行わないようにすることはもちろん、自らも飛球衝突事故を回避するよう十分注意を払う義務があるというべきである。」
と判示しています。
すなわち、加害者となったプレーヤーが、ルールの範囲内で、かつ、周囲に注意を払いながら打球したかだけでなく、被害に遭った同伴プレーヤーやキャディも被害を避けるための適切な行為をとっていたかが問題となります。
ゴルフ場事業者の責任
・ゴルフ場でプレーをする際、プレー料金を支払いゴルフ場を使用する契約を締結しているので、ゴルフ場事業者はプレーヤーに対し、信義則上の安全配慮義務を負うと考えられます。そのため、同安全配慮義務違反が認められる場合には、債務不履行責任(民法415条)を請求しえます。
・隣接ホールへの打ち込み事故については、多くの場合はコース設計の瑕疵によるものであり、ゴルフ場事業者にはホール間に防護網等の障壁を設置すべき義務があったとして、ゴルフ場事業者に対して、工作物責任(民法717条)を追及することができます(京都地裁昭和58年12月23日判決:判タ520号180頁、大阪地裁昭和61年10月31日:判タ634号174頁、東京地裁平成元年3月20日:判時1327号57頁等)。
・後続プレーヤーによる打ち込み事故等については、キャディの過失を前提としたゴルフ場事業者の使用者責任(民法715条)を追及できるでしょう。