
公園・遊園地等での事故
公園や遊園地等でも事故が起きることがあります。例えば
- ① 公園や遊園地の遊具等の不具合により子供が怪我をした
- ② 公園内でふざけていたところ友達に怪我をさせてしまった
等による事故が考えられます。
このようなケースの場合には、誰に責任が生じる(請求できるか)のでしょうか。

1. 公園・遊園地等における遊具等の不具合による事故
公園内にある遊具は整備不良や使い方等によっては危険な物にもなりえ小さい子供の使用による事故が起きることが多いです。
このような場合、当該遊具等を管理している責任主体に対して損害賠償請求を検討することになります。
⑴ 地方公共団体の管理する公園であった場合には、当該地方公共団体に対して国家賠償法2条1項に基づき損害賠償請求ができる可能性があります。
この場合、国家賠償法上の規定から「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」(国賠2条1項)があったといえるかが重要となります。
ここでいう「営造物の設置又は管理の瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、当該瑕疵の有無は当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して個別具体的に判断すべきものとされています。
このような観点から通常有すべき安全性を欠いていれば「瑕疵」があり損害賠償を請求できる可能性があります。
もっとも、被害者の特異な行動により損害が生じた場合には、その事故の発生を予見することは不可能であるとして管理者側の責任が否定される可能性もあります。

⑵ 管理主体が民間の場合には、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求(民法415条)や工作物責任(民法717条1項)が問題となり得ます。
例えば、民間の保育園で園児が遊具の利用中に怪我をした場合には保育園側に、学校行事の中で生じた場合には学校側に責任が生じるか問題となる可能性があります。
2. 子供同士の事故
公園内でふざけていたところ、友達に怪我をさせてしまった場合にどのような責任が生じてくるでしょうか。
ア. 責任能力があるか否か
相手に怪我を負わせた子供が責任無能力者である場合、その子供自身は責任を負いません。
責任無能力の場合には、自分の行為の法律上の責任を理解できないため責任を負わせることはできないためです。
一般的には12歳以下で責任無能力と判断されることが多いと思われます。
イ. 監督者責任(民法714条)
もっとも、子供自身が責任無能力者で責任を負わないとしても、その親等の監督者は監督者責任を負う可能性があります。これは、
- ① 不法行為の加害者が責任無能力者である場合において
- ② 責任無能力者に対して監督義務を負っている場合
に責任が肯定されます。
この規定は被害者保護の観点から立証責任が転換されており、被害者は主に上記①、②(他にも損害の立証等はあります)を立証すれば足り、監督者に過失があったことを立証する必要がありません。
したがって、親等の監督者は監督義務を怠らなかったことを立証できて初めて責任を免れます。
ウ. 判例(最判平成27年4月9日民集69巻3号455頁)
(責任能力のない)未成年者が校庭で蹴ったボールが道路へ出て自動二輪車を運転していた被害者がそれを避けようとして転倒して死亡した事案で、以下のように判断しました。
「責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが、本件ゴールに向けたフリーキックの練習は、…通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない。」
「また、親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ないから、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」
とした上で、未成年者の父母は日頃から危険な行為に及ばないようしつけをしていたことから監督義務者としての義務を怠らなかったとして責任を否定しました。
エ. 未成年者に責任能力がある場合
他方で、子供が責任能力がある場合、加害者である子供に対して民法709条に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
もっとも、この場合は子供に経済的能力がないことが通常であることから、責任能力ある未成年者の親に責任追及できないか問題となることがあります。
この点に関しては、親に監督義務があり、その義務に違反して加害行為がなされたという事実関係があれば、その親に対して通常の民法709条に基づく損害賠償請求ができる可能性があります。